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いじめ対応についての解説1

  • 執筆者の写真: 森田智博
    森田智博
  • 4月17日
  • 読了時間: 3分

1 いじめを「子ども同士で解決させる」という考え方

 学校におけるいじめへの対応について、「大人はすぐに介入すべきではない」という立場が存在します。この考え方は、子ども自身の成長や自律性の涵養を重視する視点に立脚していると思われます。私は専門家ではありませんが、教育学的には「構成主義的アプローチ」や「子ども中心主義」とも関係があるように思われます。

 この立場では、子ども同士の軽微なトラブルについては、子どもたちが自ら関係を築き直す機会とされ、大人の過度な関与がかえって子ども同士の関係の断絶などを招く可能性があるとしているようです。そのため、緊急性が認められない場合には一定の見守りをし、緊急性が認められる場合には大人が介入することを基本としているように思います。

 しかし、これでは被害を受けた子どもの安全が十分に保障されないのではないか、加害側の子どもに対して制裁を与えないのではいじめが再発するのではないか、教職員の力量や判断に依存した対応がなされてしまうのではないか、などという反論が想定されます。


2 積極的な大人の介入が必要とされる理由

 一方で、いじめの重大化を未然に防ぎ、被害児童生徒を保護する観点からは、「大人が積極的に介入すべき」という立場も存在します。この立場では、子ども間の権力差や集団圧力などの複雑な事情からすると、子ども同士の自主解決にはかなり限界があり、教育的責任として早期にいじめへ介入すべきと考えることになりそうです。

 また、文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(令和6年改訂)では、いじめによる重大な被害の「疑い」の段階から、学校及び設置者が積極的に事実確認と対処に着手すべきであるとされています。これにより、学校現場には早い段階からの事実確認などの対応が求められています。

 したがって、学校でのいじめ対応については、積極的な大人の介入(介入という用語が正しいかはわかりませんが、少なくとも対応)が求められているといえそうです。


3 子ども中心と大人の責任の「両立」をめざして

 実際に調査に加わったり、スクールロイヤーとして活動していると、「おおごとにはしてほしくない」「いったん自分でできることをやってみる」と発言する子どもがいることは確かです。しかし、その言葉に従って、教職員が放置をしてしまい事態が悪化してしまうことは珍しくありません。

 そのため、いじめ対応は「子どもに任せる」か「大人が介入するか」の二項対立で語られるべきではなく、重要なのは、子どもが持つ自律性や関係修復力を信頼しつつ、必要に応じて大人(教職員や保護者を中心とした)が適切に介入し、支援する「両義的なアプローチ」が必要だと思います。このようなアプローチをとるためには大人が子どもの意見を聴き、子どもの最善の利益は何かについて一定程度統一的な考えを共有し、いじめへ対応する必要があると思います。

 そのためには、どのようなことが必要になるのか検討してみなくてはなりません。

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