日常と法律で異なる「いじめ」の捉え方-知っておきたいポイント 2
- 森田智博

- 4月26日
- 読了時間: 4分
1 「いじめ」は、どの子にも起こり得る現実です
法律の定義では、いじめとは「「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」とされています(いじめ防止対策推進法第2条)。
この定義の特徴は、いじめを行ってしまったとされる側に悪意などの事情がなくても、受けた側が心身の苦痛を感じればいじめとされるという点にあると言われます。
つまり、からかい、無視、悪口、SNSの書き込みなど、「ふざけていたつもり」「冗談だった」という場合でも、受けた側が傷ついていれば、いじめとして対応することになります。
2 「いじめ」はどこでも、誰にでも起こること
私たちはつい、「うちの子に限って」と考えがちです。
しかし、1で見たようないじめの定義からすると、いじめを行ったとされている側の事情よりもいじめを受けたとされる側の重要となることから、思わぬところでいじめが生じることになります。また、子どもは成長の途中にあったり、学校では複雑な人間関係が存在することから、子ども同士のすれ違いや立場の違いから、どこででも誰にでもいじめが起こる可能性があります。「うちの子に限って」「この学校では起こらない」と思い込まず、予防と早期対応の目を持つことが、子どもたちを守る第一歩です。
特にいじめを行ったとされる側は「加害者」扱いされてしまうことから、自分の子どもの名前が挙がったとき、保護者の方が強い否定や不安を示されることがあります。我が子を信じる気持ちは親として自然な感情ですし、突然のことで受け止めきれないのは無理もありません。しかし、いじめとは上述したようなものである子からすると、一方的に否定をするのでは無く、どのようなことが起きているのかを確認する必要があります。
3 「うちの子に限って」…そのときどう対応すれば?
事実関係がどうであれ、「お相手のお子さんがつらいと感じていること」が確認された段階で、学校は「いじめ」として対応を進める義務があります。
そのため、以下の対応が必要となるでしょう。
・まずは学校からの説明や経緯を冷静に受け止める
・子どもの話を一方的に否定せず、じっくりと聞く
・「責められている」と思わず、「一緒に考えていく」姿勢を持つ
・相手の子ども・家庭の立場にも思いを寄せてみる
このような姿勢で関わることで、お子さん自身も、自分の言動を振り返り、必要な学びを得ることができます。
4 じめ対応の基本姿勢 ―「子どもを主体に考える」
学校でも家庭でも、いじめへの対応の中心に据えるべきなのは、子ども自身の気持ちや声です。
国連「子どもの権利条約」第12条では、「自分に関係することについて、子どもが自由に意見を述べ、その意見が年齢や発達に応じて十分に尊重されるべきである」と定められています。
いじめの場面では、いじめを受けた子どもはもちろん、いじめを行ったとされた子どももまた、「その時、どう感じていたのか」「なぜそうしたのか」「どのように修復していきたいのか」について意見を述べる機会が必要です。
そして学校教職員はもちろん保護者を含めた大人たちは、その声に真摯に耳を傾け、必要な支援や指導を共に考えていくことが求められます。
5 ご家庭でできること
いじめは、子どもが自ら「いじめられている」と言わないことも多く、ご家庭での観察や対話が重要な「発見」のきっかけとなります。これまで、いじめのサインに「アンテナを張る」と表現されてきましたが、最近では「ソナーで探知する」ようなイメージが推奨されています。
つまり、ただ子どもの動きを待つのでは無く、積極的に大人が気づこうとする姿勢や働きかけが重要だということになります。
ご家庭では、日々の会話で、子どもの「いつもと違う」に気づく、「困ったときは相談していいんだよ」と安心感を伝える、小さな不安でも学校に相談し一緒に支える姿勢を持つことが重要です。
いじめはいつ、どこでも、誰とでも生じうる問題です。いじめの解決には、子どもを中心に、保護者と学校が信頼し合い、協力して対応しなければなりません。「学校が何とかしてくれる」という他人任せでもなく、「学校を責める」対立的な関係でもなく、「一緒に子どもを守る」という協働関係が、いじめの解決には重要なのです。


コメント