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子どもを中心に、保護者と学校が連携する―いじめと子どもの特性

  • 執筆者の写真: 森田智博
    森田智博
  • 5月24日
  • 読了時間: 4分

いじめ重大事態を調査していると「おとなしい子」がいじめをしていたとか、「おとなしい子」の中でいじめが行われていたということがあります。いじめの内容が深刻なものほどそういったことが起こりやすいとさえかんじることがあります。その背景には何があるのか、考えてみたいと思います。


1.発達段階と集団行動

 

 私が考える理由の一つ目は、発達段階と集団行動との関係です。

 

 児童期には、仲間意識が高まり、集団での行動が活発になります。たとえば、ギャンググループ、チャムグループ、ピアグループなどの用語が示すことと関係しているのかもしれません。

 ギャンググループでは同調圧力が強く、ピアグループを形成するころになると異質性を意識しながら集団関係を築くようになるなどとされているようです。これらの用語を確認していただけるとよいと思います。コロナの影響でギャンググループを形成する時期が無くなった世代があるなどとも言われます。


 しかし、一般的に言われている発達段階は一定の目安にはなりますが、個々の発達には差があり、その子の特性によっては人間関係の習得に困難を抱えることになるのだと思います。

 また、学校では集団行動が強く求められます。集団行動が苦手な子が大きなストレスを感じたり、集団から排除されがちになることもあるように感じます。


2.発達特性と集団行動

 

 発達特性を持つ子どもは、コミュニケーションや社会的な関わりに課題を抱えることがあり、いじめの加害者や被害者になるリスクが高まります。

 

 注意しなければならないのが発達特性についての診断を受けていなくても、何らかの特性や傾向はどのような子にもあることです。私は専門家ではないので詳しく解説することはできませんが、スペクトラムというように表現されることもあるようです。また、決してコミュニケーションが苦手というわけでは無く、特有のコミュニケーションをとるだけであり、その特有のコミュニケーションをとることができる関係であればコミュニケーションをとることに支障はないのかもしれません。

 

 たとえば、学校ではおとなしい子が、家庭ではよくしゃべる子であるとか、教師が見るその子と家族が見るその子では異なる印象を持つ場合があります。この場合、教師はその子を「あまりしゃべらない」と捉えてしまうことになりますが、保護者から見れば学校に問題があり「しゃべることができない」のであって保護者には学校での不満をたくさんしゃべってくれるということも起こります。


3.境界知能と集団行動


 近時、境界知能という用語を多く見るようになりました。

 

 私は、自立に困難を抱えている成人の方と関わることもあります。

 そうした方々のお話を伺うと、子どものときに学習のつまずきや集団生活における違和感、対人関係での悩みを抱えていたことが多くあります。にもかかわらず、当時は「知的障害」と診断されることもなく、また「発達特性があるかもしれない」という支援的な視点が向けられることもほとんど無かったということです。

 そのため、ご本人は「なぜ自分だけできないのか」「みんなとうまくいかないのか」と内面に苦しさを抱えながら、学校での生活を過ごしてきた経験があるのです。

 中には、「なぜできないんだ」「やる気が無いのか」などと責められた経験もある方、仲間はずれにされたことがある方もいらっしゃいます。


 こうした経験の積み重ねは、自己肯定感にも大きな影響を与え、さらに成人になってからの自立や社会参加の困難さにつながることがあります。

 

4.教職員として考えること


 教職員は、これらの特性を理解し、子どもたちの行動や関係性に注意を払い、適切な支援を行うことが重要です。教職員から見ると「おとなしい子」は「手のかからない子」ではなく「手をかけてあげなければならない子」である可能性が高いです。


 かつての生徒指導では、非行問題などの「手のかかる子」にどのように対応するかということをそれぞれの学校で問題にされることが多かったと思います。しかし、新しくなった生徒指導提要を見てもわかるように、「おとなしい子」や「手のかからない子」と見える子への対応が必要であると考えた方がよいと思います。


 教職員間の連携、保護者との連携、専門職との連携を充実させ、子どもたち一人ひとりの特性を把握することで、いじめの予防や早期対応につな下てほしいと思います。

 
 
 

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